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若者の就職難

若者の就職難の嘘

中小企業ではむしろ採用難

2016年に大卒就職率が過去最多の97.3%を記録した就職市場。

これまでは新卒学生が就職できず買い手市場が何年も続いているとされてきた。

就職氷河期の再来と言われてきた若者の就職事情であるが、これは真実だったのであろうか。

まず求人を見てみよう。

リクルートワークス研究所が発表している求人倍率調査によると、1990年から2005年ほどまで続いた就職氷河期で、最も求人数の少なかった1996年が、39万700件であるのに対し、2010年は72万5300件と大幅に回復している。

対して民間企業就職希望者は、1996年が36万2200人、2010年は44万7000人と求人数のように劇的に増えているわけではない。

求人倍率(就職希望者数に対して何件の求人があるかを示す指標)も1.08から1.62と激増している。

求人数が激増しているのに、希望者がそこまで増えていなければ希望者は複数の内定が取れる状況になり、理屈としては就職難になどなるはずがないのである。

それにも関わらず、巷には就職できない学生が溢れかえっていたという。

これはどういうことなのだろうか。

従業員1000人未満の企業の求人倍率は、2010年で3.6と高い。それにも関わらず新卒全体の求人倍率はそこまで高くない。

このことから分かるのは、新卒者の「大手病」が問題なのである。

「大手病」とは、大企業ばかりを志望し、中小企業は受験しない傾向のことで、これにより中小企業の方では、逆に「採用難」に陥り、世間でいわれる就職難を全く実感できない採用担当者も多いという話だ。

学生に蔓延する「大手病」の根元

なぜ学生は「大手病」にかかってしまったのであろうか。

確かに大企業は福利厚生や給与、安定性などの面で人気があるというのも少し考えれば分かることである。

しかし、「大手病」の症状は顕著である。

この「大手病」の理由の一つには、社会状況が厳しくなっているということがあげられるだろう。

例えばバブル期のように、どこも人手を欲しがっている超売り手市場であれば、学生は中小企業に一旦就職しておいて、あるいは最悪フリーターでもそこからまた大企業に就職することができただろう。

しかし、現代のように、大企業でも倒産の可能性を抱えた先行きの見えない社会では、志望者に求められるスペックが高く、中小企業から大企業への転職には相当のスキルが必要になってくる。

逆に、大企業から中小企業への転職はそれほど難しくない。

故に、学生は最初から大企業を選ぶのである。

また、学生が昔より企業の情報を詳細に得られることになったということもあげられるだろう。

企業の詳細な情報はおろか、そこに現在勤めている社員の声など、公式のデータでは得られない、実際にそこで働いている人間の実情まで、就職サイトや就職エージェント、説明会などを通して知ることができる。

一方、採用にそこまで予算を割けない中小企業は学生に対して広告ができないので、出会える場が少なくなり、認知度や信頼度にも大きな差が出てしまう。

こういった状況では、学生が、情報の少ない中小企業より多くの判断材料が得られる大企業に偏っていくのも仕方がないことといえるかもしれない。

現代の若者は、生まれた時から不況の時代しか知らないため、昔の若者より慎重にならざるおえない。

更に、社会の方でも先行き不透明な時代状況から、将来に対するしっかりとした設計を学生に求めがちになっている。

これらの状況から生まれた「大手病」があたかも学生の就職難というイメージを作り出していたのである。

就職先を選ばなければ就職できることは先に挙げた通りである。

就職難のイメージを払拭するためには、若者が一度や二度失敗してもやり直せるような、失敗に寛容な社会に立ち戻ることが必要なのかもしれない。

大学院進学が就職において不利に働く

高学歴でも希望の会社に入るのが難しい時代だが、大学院生の状況は更に悲惨である。

大学教授のポストが学生の数に対してあまりにも不足しているため、大学院生も民間企業に職を求める。

しかし、企業は大学院生より若い学部生を欲しがる。

2年多く勉強した優秀な学生が就職できないという本末転倒の状況が起きているのだ。